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建前 [中村木材レポート]

2月中旬、祖父と祖母の法要があり、週末、実家へ帰りました。お参りは日曜日でして、その前の日の土曜日、建前(建て方)があり、家を掃除するのを手伝うよう言われたのですが、どうせ手伝うなら掃除ではなく、もちろん、「建前行くわ!!!」 ってなことで、かれこれ15年ぶりのお手伝いとなりますが、中村木材http://www.nakamoku.jp/index.htmlの建前に行って参りました。

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いや~。母にタオルとヘルメットをかぶせてもらって、ひさしぶりに建前に行けるとワクワクしてしまいまして、朝、工場で写真を撮ってもらいました。工場のお手伝いは子供の頃からですので、原点の姿とでも言いましょうか。このワタクシの姿を見て、大工さんの第一声は、「母ちゃんによ~似てきたなぁ~。」 ^^; オホホホホ。。。

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土曜日の朝、7時半頃、現場に到着しました。もう大工さんはいらっしゃいまして、薄らかかった雪をはいていました。まずは、この丸太で組まれた足場に驚愕。さすが材木屋。参りました。思わずこの階段に登ってみましたが、外側に向かってたわむたわむ。 

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↑ お天気は回復しまして、寒いながらも太陽の元でお仕事です。クレーン車も到着しまして、パタパタと組み上げ始めました。地組と言いまして、 ある程度、柱と梁を地面で組んでおくのですが、前日におおよそ組んだようで、早い早い。

いえいえ、それより驚愕なのは、人数です。大工さん一人に、クレーン操縦士さん一人、父、兄、ワタクシと、5人の建前です。こんなに少ない人数でやる建前、経験ありません。ワタクシはクレーンで釣り上げる材料に紐をからげる役目でしたので、建物は3人で組む感じです。しかもその3人中、2人は、いわば、工務店の自前です。なんと合理的な! 大工さん曰く、「よ~けおったって、実際、動いとる人少ないであかんわ~」 ええ。その通り。建前は実にテキパキと、滞りなく進みました。サスガ!!! 

中村木材は現在、兄が図面を書いています。昔は父や母が手書きの綺麗な図面を書いていました。経費が抑えられるということは、建物に十分お金をかけられるということですから、お施主さんにとっては好ましいことと思います。営業さんがいる工務店さんは、その分建物にお金が乗っているということです。もちろん、設計屋が入れば、その分建物にお金が乗ることになります。

いわば、中村木材のやり方で言うと、設計屋のワタクシは余剰人員と言えましょう。(;_;) 田舎では食べていけない、理由のない設計屋でございますが、せめて営業と設計屋が兼務できれば必要なお金と認めていただけるのではないか、と信じ、ワタクシはこのごろの仕事に向かっています。(-_-;)

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↑ お昼には1階が組み上がりました。早い早い。 2階まで伸びる柱は、通し柱です。

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↑ 2階に資材を置いて、午後から2階から上を組み上げます。室内から見える柱は汚れ防止に紙を巻いてあります。子供の頃、紙巻をよく手伝いました。 柱は桧、2階の床梁は米松です。大きな力がかかるところは地松が使われています。 写真中下あたりに青いバンドが見えますが、これは荷物をからげるバンドです。このバンドで柱と柱を引き寄せるわけでして、二人分くらいこれで稼いでいるのでは???

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↑ 大工さんが手加工で刻んでいます。柱と梁の接合部は昔ながらの組み方が基本で、ボルトを併用する構法です。ワタクシは勤め人の頃、ボルトを使わない仕口継手(接合部の組み方)を基本とした民家型工法というのを学びました。実家の建物は実際、ボルトを使わず、元宮大工の父が刻んで建てたものなのですが、その父曰く、「ボルトを使わないで収めようと思うと、柱は8寸(240×240)、梁は尺2寸(120×360)以上いる。」 それが本当のところではないかと、実は、感じています。それより小さい材料を使えば、仕口を刻んだ後の柱の残りが少なくなるので、逆に弱点になると思うのです。実際、実験をしてみると、差鴨居の仕口のところで柱が折れることが多いと聞きます。 

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↑ 手加工の例を一つ、軒桁(のきげた)といいまして、2階の横方向の材の接合部です。金輪継ぎ(かなわつぎ)と言います。材料と材料をつなぐ仕口です。 クレーンで材料を2階の床に上げまして、そこで地組し、つなぎます。

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 ↑ 栓を中央に打って、材がつながりました。 

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↑ つないだ軒桁を柱に組みます。建物の端から端へ、長い材になりました。 まぁ~、この組上げが面白くて、隙を見て2階に登るのですが、その度に父から、「下におってクレーンの紐通してくれなあかん!」 言われて、そそくさと降りて、また登って、を繰り返しておりました。

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↑ 小屋梁(2階の軒桁レベルの梁)は全て梁勝ち(柱が梁に刺さる仕口)です。写真右は台持ち継ぎです。これも古くからの大工さんの技です。 

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 ↑ 下の面に穴が2つ見えますが、そこに木の栓を打って、材をつなげます。

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↑ 屋根の下地となる母屋(もや)という材料です。桧ですね。桧の節は赤いのでよくわかります。 ちなみにこの継手仕口は「腰掛け鎌継ぎ(こしかけかまつぎ)」と言います。 

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 ↑ そして、土曜日の作業が終わりました。屋根が未完成で、次の日の日曜日にクレーン士さんにもお願いをして、続きを進めました。月曜日の午後から雨が降るというので、それまでに屋根にルーフィングをかけたいところです。

で、日曜日もお手伝いしたいな~なんて、父に嘆願したわけですが、お参りに行くよう促されまして、ちょっと残念。こんなこと言ったら、祖父と祖母に叱られるかしらん。

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↑ 月曜日、東京へ帰りがけに現場に寄りました。 屋根の形も出来上がり、建物のボリュームがはっきりしてきました。 

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↑ 墨つぼです。簡単に言うと、大工さんが使う鉛筆、線引き道具です。子供の頃いたずらをして、よく叱られました。 

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 ↑ 屋根には杉板(野地板と言います。)が貼られていました。雨が当たる軒の部分は、杉でも丸太の芯に近い赤みの部分を使っています。杉の赤みは湿気に強い材料です。 適材適所に気遣いしてこその木です。

兄と義姉とでルーフィングを貼っていました。義姉はもうすっかり材木屋の女将さんです。

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 ↑ 小屋梁に地松が使われていました。すごい迫力です。 梁に黒い線が見えますが、この線は先ほどの墨つぼで付けます。湾曲する材に対して建物の水平位置を示します。 

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 ↑ 地松の軒桁、綺麗ですねぇ。木目にうっとり。 

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 ↑ 垂木(斜材)の桧の白材に、野地板の杉の赤みが良く映えます。美しいですねぇ。

実に楽しい研修でした。まずは、お施主さんに感謝したいと思います。さすが材木屋です。力強い構造体に惚れ惚れ。何度見ても良いものです。


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