SSブログ

竣工 [セカンドライフを楽しむ家]

セカンドライフを楽しむ家は2013年の夏に無事、竣工を迎えることが出来ました。春が近づく今日このごろですが、報告したいと思います。お施主さんの引越しは2月で、外構工事竣工が8月。何はともあれ、お施主さんは充実したセカンドライフをおくられているご様子。一安心でございます。

長いので、スクロールでさ~っと見ていただけると幸いです。

 義父と義弟が営みます株式会社匠(埼玉県熊谷市)が施工し、役物と呼ばれるような木は兄が営みます中村木材http://nonki-tun.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300306779-1で調達しました。使えるものはなんでも使う方針でして(*´ω`*)。。。

140129  137.jpg

 ↑ 北東から見る

 朝日が瓦に当たって、何とも美しい屋根ラインが浮かびます。東と南に道路が面する、都会ながらお日様が充分臨める敷地条件です。正面に見えるのが玄関アプローチです。

131108 (11).jpg

 ↑ 南東角から見る

 屋根を大きく掛け、壁から屋根の先端まで(軒の出)1m以上確保しています。軒の出が大きいと夏の厳しい日差しを遮ってくれますし、雨水による壁の汚れを防ぎます。瓦屋根は断熱性も耐久性も優れていて、住宅の屋根素材としては優秀な仕組みだと思います。バルコニーは幅4間(7.2m)×奥行き1間(1.8m)確保していまして、物干し竿を取り付けましたが腰壁を高くしましたので、干された洗濯物は道路からほとんど見えません。

 屋根は、雨や雪に対する対策を第一に考えるべきかと思います。日本の気候を舐めて掛かると大変なことになると、今年の大雪に再確認した次第です。

 サッシはアルミサッシを使いました。複層low-eガラスを使用しています。

130710  006.jpg

 ↑ 生垣(ギンバイカ)の白い花

 南の道路境界沿いにはお施主さんのご要望もあり、塀ではなく生垣を作ることになりました。樹種はギンバイカにしました。ふわふわとした可愛らしい白い花が咲きます。結婚式のブーケに利用されることが多く、キャサリン妃のブーケにも含まれていた花です。生垣に使われる樹種としては比較的高価ですが、公的な生垣助成を利用しました。これは震災時に塀が倒れることで人が怪我をしたり、道路を塞ぎ消火活動に支障が出ることを避けたりするため、公が道路境界付近を生垣で収めるよう推進するもので、生垣を施工する際は助成金をいただくことが出来ます。

 6月にお施主さんから「可愛らしい白いお花が咲いたわよ!」と弾んだ声でお電話をいただきまして、なんだか嬉しくなり、激写に伺いました。一年目はさすがに花が少なかったですが、全体が白く見えるほど花が咲くかと思います。毎年6月が楽しみですね。

140129  058.jpg

 ↑ 南西から軒裏を見る

 雨樋はガルバリウム鋼板でして、瓦屋根の耐久性と同じく、寿命の長いものです。 出窓もしっかりと防火対策を行いました。

 140129  093.jpg  

 ↑ 玄関前の軒裏を見る

 柔らかな左官壁とmm単位で刻まれるシャープな木ラインが良い均衡を保ちます。外壁はゲーテハウスのユニプラルを採用しました。ガラス質の骨材を使ったもので、耐久性が期待できます。

http://www.goethe.co.jp/unipral.html

130915  091.jpg

↑ 玄関アプローチを見る

 玄関へは写真の北側と、駐車場側の南側からのアプローチが可能です。北側の階段は一段あたりの高さ110mm程度を3段、南側の階段は一段あたりの高さ175mm程度で2段です。お施主さんには北側の階段の方が好評です。写真正面はポストで、玄関と同じ鍵で開けられます。

 このアプローチ、排水管の出入り口が位置するところにありまして、お施主さんの希望もあり、蓋が並ばないように設備工事屋さんに頑張ってもらいました。

130915  0831.jpg

 ↑ 玄関を見る

 玄関前の木列柱はブラジル材のイペで作りました。耐久性50年と言われている材料ですが、風雨にさらさらされることもあり、取り替えることの出来る収まりにしてあります。手すりを支える機能もありますが、玄関前がすぐ道路という見え方を変えたいというお施主さんのご要望もあり、取り付けました。この柱の大きさも間隔もかなり悩みました。

 四季の移ろいを感じられるように植栽を計画したいところですが、セカンドライフを楽しむ家であるべきでして、木のお世話が大変にならないよう、高木と呼ばれるものは植えないようにしました。さりとて、花が咲いたり実がなったりするとそれだけで嬉しいものです。写真右、アプローチにシンボルツリーとしてヒメリンゴを植えました。その足元には、コクチナシやセンリョウを植えています。難を転ずると言われている縁起木のナンテンも植えました。木列柱の足元に植えられているのはオタフクナンテンで、冬には紅葉を楽しむことが出来る常緑樹です。

130915  085.jpg

↑ ヒメリンゴの実

 9月にお伺いした際、ヒメリンゴの実がなっていて「可愛いわね~」とのお声をいただきました。何だか設計者としましては嬉しくなってしまいます。ヒメリンゴはよく伸びるので、思い切った剪定を毎年していただきたいところなのですが、春は桜に似た花が咲き、秋には実がなる落葉中木で、盆栽としても愛されている木です。

130710  024.jpg
 

 ↑ 玄関網戸を見る

 玄関の上吊引戸は木製建具です。防火上、建築基準法で定められている延焼の恐れのある範囲をギリギリ避けていますので、建具屋さんに作ってもらえる建具を入れることが出来ました。なので、神代さんに作っていただいた装飾ガラスを入れることが出来ました。この網戸も上吊引戸でして、夏はお施主さんに大好評でした。「料亭みたいでイイよ!」とのこと。

130207  553.jpg

↑ 玄関からギャラリーを見る

 ギャラリーにはお施主さんのお気に入りの絵が数枚飾られます。幅広の廊下は家全体にゆったりした雰囲気を醸し出します。玄関に使える空間が少なかったことから、階段の上り口を玄関側に配置することで広がりを持たせました。階段下は屋内から利用する収納はもちろんのこと、屋外から利用できる収納も設けました。

130207  430.jpg

 ↑ 玄関の下駄箱を見る

 桧の建具を入れています。下駄箱の中は傘を入れられるよう、棚板の奥行に工夫をしています。上がり框(土間から床へ上がる端部の材料)は中村木材から調達した松材です。幅広の材料で、それはそれは美しい木目の板でしたので、兄からはこの斜めカットは辞めてはどうかと提案ありましたが、土間の広さにゆとりがありませんで、お施主さんのご希望もあり、設計図通りカット。この下駄箱の前の広がりの部分に花瓶などを置いて飾ることを意図しています。

130207  186.jpg

↑ 玄関の縦手すりと飾り棚(ニッチ)を見る

 縦手すりは鍛造です。廊下だけでなくほとんどの壁に、後々手すりを取り付けられるよう下地材が入っています。飾り棚の板は上がり框のカットした部分を利用しました。

130207  555.jpg

↑ 階段の上り口を見る

階段板と蹴込板(縦方向の板)は中村木材から入れた松材です。安定感抜群です。手すりは木で造作することも提案したのですが、お施主さんが丸棒でしっかり握れるものを望まれたので既製品を使いました。私も出産し、帰宅したすぐは手すりがないと移動できませんでしたから、そのお気持ちよくわかります。手すりはしっかり握れるものを取り付けたいものです。

130207 300.jpg

↑廻り階段を2階の廊下から見る

 回り階段はバリアフリー当観点から見れば、あまりオススメされるものではないのですが、段数を少なくして階段途中に踊り場を設けるよりも、1段あたりの高さを180mmに抑えることを優先しました。階段幅にゆとりを持たせていますので、ゆったりと上がっていけます。松の幅広板が見事です。

130207  267.jpg

↑ 床板も中村木材から調達です。吉野桧です。品の良いお姿で、裸足で歩くと誠に心地良い床です。

130207  508.jpg

 ↑ ギャラリーから洗面所とトイレの扉を見る

 トイレの建具は上吊3枚引戸で、洗面所の建具は上吊引戸で戸袋に収まりますので、双方ゆとりの開口部です。

130207  469.jpg

 ↑ パイプスペースを見る

 廊下突き当たりのパイプスペースは、ホウキやモップなどの長いものをしまう収納にしました。これが奥様に大好評。「私も主婦ですから。」なんて、胸を張ったりして。

130207  443.jpg

↑ トイレの入口引戸

 3枚引戸で連動して動きます。上吊引戸で、1m以上の開口幅を確保しています。

130207  465.jpg

 ↑ 1階トイレを見る

 洗面所とトイレの壁は杉の一等材の羽目板に、しみこむタイプの白色保護塗料を塗りました。手洗器と便器、後ろのこげ茶の棚もTOTOのセット品を使いました。タンクが収納されていますので、凸凹が少なく掃除が楽と、選ばれるお施主さんが多いように思います。その上には壁内に収納棚を作りました。トイレットペーパーなどが入っています。自前のカメラマンが鏡に映ってますね。。。。

130207  322.jpg

↑ 洗面所を浴室を見る

 洗面所にも桧の床板を貼りました。しみこむタイプの木材保護塗料を3回塗っています。壁にはタオル棚を設けました。浴室から出たところの手すりは、裸で近づくことを考慮し、端部の金物に凸部の無い、丸みを帯びたものを使いました。

 浴室はタカラのユニットバスです。木の浴室も提案したいところなのですが、義父や兄にも尋ねたところ、土台の耐久性を考えれば水漏れの無いユニットバスが良いとのこと。タカラは義父お勧めのメーカーで、ホーロー壁に浴槽ですので耐久性も抜群です。

130207  440.jpg

↑ 食堂横の飾り棚を見る

 インターフォンの親機を設置。コンセントは電話の子機を置くことを想定しています。

130207  010.jpg

↑ 寝室から食堂と台所を見る

 「セカンドライフを楽しむ家」が大きなテーマですが、第一の提案は、寝室、食堂、台所、神棚に仏壇、浴室に洗面所を1階に配置しすることで、階段を上り下りせずともおおよその生活を送ることが可能です。2階には書斎と12畳の洋間を設けました。第二の提案は、将来的に握力の低下が予想されることから、少しの力で動かせる上吊引き戸を多用しました。レールが床にありませんのでつまづく危険性を最小限に抑えることも出来ると思います。

130207  008.jpg

↑ 食堂の通風雨戸を見る

 セカンドライフを楽しむことを考えると開閉作業が楽な電動シャッターをお勧めしたいところなのですが、以前お住まいになられた住まいがそうだったように、お施主さんのご要望は雨戸が良いとのこと。 しかも以前のお住まいでは欄間部分は別サッシになっていて、夏の夜は欄間サッシを開けて快適に就寝されていたとか。この方式は現行法規では防火上問題あり。これは色々と悩みまして、一部に通風機能のある雨戸を入れることにしました。この雨戸は開閉角度が調節できるので、スダレ替わりに使うことも可能です。快適のようなのですが一般的な雨戸より重いようでして、開閉がひと手間掛かるとのこと。既製品を使うとなると満点はなかなか無いですね。。。

130207 079.jpg

↑ 食堂から和室と寝室を見る

 1階は引戸で部屋を間仕切りますが、全て戸袋に収まるのでワンルームとしての利用が可能です。右の寝室の木壁に見える部分はクローゼットと天袋です。クローゼットは柱芯で2.5間(4550mm)の幅があり、上下各3枚の引戸で大きい建具ですが、上吊ですので楽に開閉出来ます。

 欄間部分(引戸の上)にはポリカーボネートと呼ばれる透明な板を入れました。ガラスより割れにくい材料です。

  

130207  164.jpg

↑ 寝室の扉を締めたところ

 和室は上吊引戸で締切ることが出来ます。和室正面は神棚と仏壇置き場です。和室の天井板は杉の無垢板です。大工さん御用達の材木屋さんが調達してくれました。畳は琉球畳です。引戸は土佐和紙を貼っています。

130207  049.jpg

↑ 台所を見る

 台所入口には壁に新聞置き場を作りました。雑誌や本など、食卓に置かれがちな我が家の惨状を鑑み、提案させていただいた次第です。台所の手元照明は吊戸を支える壁下枠に設けました。

130207 437.jpg

↑ 食堂を見る

 お施主さんが引越しをされてから外構の打ち合わせにお伺いした時の写真です。これがまた快適で。桧の匂いはもちろんのこと、オフホワイト色の漆喰壁が空間に柔らかい印象を与えているのかもしれません。収納もたっぷりで、道路からの視線も気にならないとか。

130207  203.jpg

 

↑ 2階廊下から洋間の引戸、トイレ開き戸、洗面コーナーを見る

 建築基準法の北側斜線内に建物を収めるため、2階の階段と洗面所、トイレの天井を斜めに下げました。壁沿いに立つことはありませんので、生活上不便はないかと思います。照明は全て蛍光灯ですが、電球色を採用していますので温かみがあります。LED照明も検討したのですが、お施主さんがご自身で電球を交換できて、さらに断熱材に囲まれる場所での設置は採用できる製品がありませんでした。

130207 竣工 224.jpg

↑ 書斎から階段室側を見る

 松の3枚接ぎ(3枚の厚板を接着剤で合わせた幅広板)の机は、松の脚も手伝って安定感抜群です。棚は杉の集成材で作りました。この東の窓からは、お施主さんお気に入りの公園の遠景がのぞめます。お施主さんは、この書斎にこもられるのが日課とか。「セカンドライフを楽しむ家」としては必須の部屋です。

130207 477.jpg

  左:2階洋間の出入り口と絵画収納を見る  右:絵画収納を見る

 絵画は絵の面方向に引き出すとなると手前にある絵画を順番にどかしていかなければならず、何とか、額の側面方向から引き出せないかと考案し、この収納棚を作りました。この上下の引き戸も上吊戸ですので、ギャラリーの絵画入れ替えも比較的楽に出来るのではないかと思います。

130207  256.jpg

↑ 2階洋間から階段室側を見る

 2階の壁は土佐和紙を貼りました。正面、壁の直角部分に木がありますが、これはコーナーガードです。高さ1.3mまで角を取った材を入れました。全ての角にコーナーガードを入れてあります。角で足や頭をぶつけた時の衝撃を和らげるように、また、掃除機などが当たって壁を壊すのを避ける意味もあります。これは子育てを経験したからこそのアイディアです。愚息に感謝しなければなりません。

130207  260.jpg

↑ 2階洋間を見る

 12畳のこの洋間は色々な用途に使うことが考えられます。奥様はたくさんのお友達がいらした時にサロンとして使われているそうです。家族構成に変化があった時にも対応出来ることでしょう。正面の建具は上吊引戸でクローゼットと天袋があります。部屋の幅は柱芯で2間(3640mm)あります。

 

 窓前に天井から棒が2本吊り下がっているのは、物干し竿をかけられる金物です。雨の日はここに干しておけますし、この金物は取り外すことも出来ます。1階の寝室にも取り付けてあります。

 職人さんの手作り感が所々で感じられる住まいになりました。竣工まで長い時間をいただけたこと、お施主さんに本当に感謝したいと思います。お二人共、充実したセカンドライフを送られているそうでして、まさに設計屋冥利につきます。お施主さんには、お住まい共々、これからも末永く、お付き合いいただけると幸いです。

 ダラダラと長いレポートですが最後までお読みいただき、有難うございました。m(_ _)m

(基本計画から工事、竣工までの流れが分かるページはhttp://nonki-tun.blog.so-net.ne.jp/archive/c2301792082-1 です。)


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。